法務のお仕事 ~ハウスメーカーでのクレーム対応の実態②【外壁編】~

住宅の外壁 法務のお仕事

皆さんこんにちは。yuさんです。

住宅業界はクレーム産業」とよく言われますね。私が勤めるハウスメーカーでも大小様々なクレームが日々発生しております。クレームにはどんなのがあるのか…については、私の以前の記事でまとめておりますので、宜しければご覧ください。

本日は、皆さんが住まわれる住宅の中でも最もダメージを負うであろうものの一つである外壁に関するクレームについて、実際の事例とともにご紹介してまいります。


外壁の役割とは?

屋根と同じように外壁は雨や風、紫外線など様々な外的から守りプライバシー保護の役割を持っています。
住んでいる人の個性が表れるものとして、住宅の外観を大きく左右することも外壁の役割と特徴と言えます。外壁が古くなり劣化が進むと雨漏りなどの原因となってしまうので、屋根修理と同様に塗り替えや補修が必要となります。

外壁の塗り替え(塗装)について、詳しくお知りになりたい方はこちら(外部サイト)。

デザインハウス

住宅の「見た目」を構成する重要な要素の一つですよね。故に、外壁に関するクレームは少なくありません。


外壁に関するクレーム事例

(1)クレームの概要

営業からは”汚れない外壁”と聞いていたのに、引渡しを受けて1年半で外壁に藻が生えたんだけど!?

クレーム

最近は、外壁の性能もずいぶん向上してきました。今回の事例はその性能の向上した外壁について起きたクレームです。

使用していたのはニチハ社のFuge(フュージェ)という外壁です。 ※今回の事例において、ニチハさんには何らの非もございません。

ニチハの外壁

この外壁には、「マイクロガード」という機能が付いていました。それは、外壁に付着した汚れを雨水で洗い落とすセルフクリーニングの機能です。

Fuge 外壁

詳しい特長の説明は、ニチハ社のホームページでご確認いただければと思います。このセルフクリーニング機能以外に、防汚効果も備えており、更に防藻、防カビ剤も配合しています。


営業担当者にヒアリングをすると、当時、どうやら”汚れが付きにくい”とお客さんに説明をした様子でした。事実はどうか分かりません。仮にそれが事実であった場合、お客さんには”汚れない”とインプットされてしまったのかもしれません。


更に、このクレームを受け付けたのが当社のアフターメンテナンス部門の担当者だったのですが、お客さんは気性が荒い方であり、何度も詰め寄られた際に、その場凌ぎで外壁を全部交換するとの口約束をしてしまったとの事でした。


このクレームは更に大きくなり、お客さんの要求が外壁の全張替え(費用当社負担)になってしまっており、現場で抑えきれなくなったものが、私のところに相談に上がってきました。

(´・ω・`) 悲惨…


(2)問題の整理と、対応

このクレームは、以下のように整理できます。

藻の付着について

藻の付着は、湿気が多かったり、近くに草木があったりすることにより発生する自然現象です。外部環境によって左右されるものです。

また、ニチハ社のFugeのカタログにも「マイクロガードのセルフクリーニング機能は、藻・カビに対して充分な洗浄効果は発揮しません」と明記されており、「防汚効果としての防藻・防カビ剤は生成を抑制はする」が発生させないとは明記されておりません。

外壁面のこまめな点検・清掃について

これはお客さんによる日頃のメンテナンス、維持管理責任の範囲となります。

外壁に藻が付着することの法的問題

以上で見てきた通り、外壁に藻が付着することは通常充分にあり得ることであり、外壁の機能の欠陥(瑕疵)ではなく、ハウスメーカー側が責任を負う必要はありません。

営業担当者による説明上の問題

これは、言った/言わないの問題となってしまっておりますので、立証のしようがありません。但し、お客さんが誤ったインプットをしてしまった可能性があるのなら、営業担当者による説明の至らなさはあった可能性があります。

アフターメンテナンス部門の担当者が外壁の全張替えを口約束した点

こういうの、マジ勘弁です。

但し、法律上は、一担当者には契約締結の権限は無く、口約束してしまったかもしれませんが、直ちにそれが法的に有効であるとの判例(過去の裁判の事例)はほとんどありません。


以上より、お客さんのご要求はお断り申し上げました。

もっとも、これで収まるようなお客さんではありませんでしたので、実際には会社宛にお客さんに要望書面を送って頂いては、私が回答書面を作成するのを3往復ほど行い、営業の説明の至らなさと、アフターメンテナンス担当者による無責任な口約束により、あらぬ期待を抱かせてしまったお詫びとを含め、数万円のお詫び金で決着しました。

最後には多数の恨みつらみが書かれていましたが、お客さん側もどうしようもないのを悟ったご様子でした。


まとめ

これは決して私の武勇伝ではありません。クレームは、ちょっとした行き違いで発生し、その行き違いが最後まで解決しない事例もたくさんあります。

私たちハウスメーカーの社員はプロとして、お客さんに対して、正しい説明を根拠ある資料とともに行うのは絶対条件であり、上記の事例は正直なところそれが出来ていなかった事例になります。

一方で、ある皆さんは家づくりの主役であり、引き渡された家におそらく一生住み続けることになります。営業などの説明に「あれっ?」と感じた点があれば、細かく一つ一つ確認をしていきましょう。

但し、全部が全部、これをやっていたら疲れますので、ポイントをシッカリ押さえて。

ではまた。

yuさん拝


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