皆さんこんばんは。yuさんです。
皆さんが家づくりをされるにあたって、以下のようなご要望をされるお客様が一定数居ます。
A社で図面を作成して見積もりを貰ってから、同じ図面をB社に持ち込んで「この通りに家を作って!金額は幾らかかりますか?」というご要望です。
(´・ω・`) あー、あるある。
実は、昨年、2020年の4月から、意匠法という法律が改正され施行されており、今、これをやるとけっこうキツイ状況になりかねません。
本日は、この改正意匠法のうち、住宅に関わる部分について見ていきたいと思います。家づくりを検討されている皆さんはもちろん、ハウスメーカーなどで法務のお仕事に就いている方も是非ご覧になってください。
■意匠権とは?
詳しくは、日本弁理士会のページをご覧頂ければと思いますが、簡単に言うと、商品や製品のデザインについて独占権を認める権利です。意匠権を取得すれば、そのデザインを独占的に使用できます。
商品や製品、すなわち物品のデザインが意匠登録の対象でしたので、これまでは不動産(住宅)はその対象外でした。
■意匠法改正のきっかけ(?)
(1)サンワホーム事件(1999年~)
山梨県甲府市にて、サンワホームが積水ハウスに激似のモデルハウスを建てたことに対して、積水ハウスが「著作権侵害」として訴えを起こしたが、3年の裁判の結果敗訴した事件。
(2)コメダ珈琲事件(2016年)
マサキ珈琲を経営する会社が、コメダ珈琲そっくりの外観の喫茶店をオープン。コメダ珈琲が「不正競争防止法違反」として差止めの訴えをし、勝訴したレアな事件。
独特ですもんね。
■改正意匠法の概要(※関係部分のみ)
住宅(建物)の外観デザインや、施設の内装デザインについての意匠登録が可能になりました。詳しくは、こちら(外部サイト)をご覧ください。
■改正意匠法を受けたハウスメーカーの動き
もちろん、ハウスメーカーによってスタンスに差はありますが、積水ハウスやヘーベルハウス(旭化成ホームズ)、BESS(アールシーコア)などは住宅の外観デザインを積極的に意匠登録出願しているようです。
意匠登録を司る特許庁の現在の方針は、「民間企業に積極的に権利を持っていただく」「模倣品は排除していく」といった姿勢のようで、他社との類似性がなければ意匠登録を割と認めているようです。改正されたばかりで、特許庁にも明確な審査基準があるわけではなく、審査官の属人性で審査されているとも聞きます。
世は、大意匠登録時代…ですね。
■この記事の冒頭の要望について
さて、ここまで見て、A社で図面を作成して見積もりを貰ってから、同じ図面をB社に持ち込んで「この通りに家を作って!金額は幾らかかりますか?」という冒頭のご要望… どう思いますか?
(´・ω・`) むむ
A社が作成した図面の住宅を意匠登録していたら、皆さんがこの要望を推し進めることで、B社によるA社の意匠権侵害に繋がる可能性がありますね。
■他社の意匠権を侵害したら?
他社の意匠権を侵害したら、以下の4つの対処をされる可能性があります。
① 差止め請求(使用不可にする、解体させる)を受ける
② 損害賠償請求を受ける
③ 刑事告訴を受ける
④ 信用回復請求(新聞等への謝罪記事掲載)を受ける
このうち、①って、皆さんにとってキツくないですか?せっかく建てた家なのに解体させられるんです。
(´・ω・`) せやな。
…実はこの①は「私的利用は対象外」となりますので、皆さんに引き渡された住宅については差し止め請求はできなくなっております。
とはいえ、ハウスメーカーに断られたのにもかかわらず、なおも皆さんが上記の要望を押し通した場合、皆さんにこれらの意匠権侵害請求が行く可能性もありますので、くれぐれもご注意ください。いい加減なハウスメーカーでもない限り、今の時代ダメなものはダメと言われます。
「俺は客だぞ」の姿勢の人、くれぐれも。
ではまた。
yuさん拝
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